トライバルタトゥーの歴史2

東南アジア

東南アジア地域の少数部族にもトライバルタトゥーのルーツがあります。ボルネオ島(カリマンタン島)、フィリピン、インドネシアのものが有名です。
 
ボルネオ島
ひとつの島ですが、マレーシア、インドネシア、ブルネイの3カ国が共存しています。
日本の国土面積の2倍近くもある大きな島で、グリーンランド、ニューギニアに次ぐ世界で3番目に大きい島となっています。
この島に分布する部族、ダヤク族、イバン族、カヤン族、ケンヤ族などは昔から互いに交易と闘争を繰り返していました。
そうしたいきさつの中で独自のトライバルタトゥー文化を生み出しています。
描かれるパターンには、それぞれの部族の間で微妙な違いがありますが、曲線を主体としたうず巻き模様は共通しています。
絵柄の色はほぼ黒のみで、らせん、うず巻き模様を多用する点に特徴があります。
他の地域のものと同様に、自然界の動植物をモチーフとする絵柄が中心ですが、
マンデルブロ集合やジュリア集合を思わせるフラクタル図像のような絵柄も見られます。
カヤン族のトライバルタトゥーは、もともと女性向けが中心で、呪術的意味のあるパターンを何年もかけて身体の広い範囲にほどこすものでした。
男性向けについては、もともとは単に装飾的なものでしたが、部族間の闘争で手柄を立てた者に対する勲章のようなデザインが彫られることもありました。
イバン族のトライバルタトゥーは、首、胸、肩から腕にかけて、やや細かい描写で動植物などをモチーフとした図柄を描くもので、左右対称とは限りません。
ボルネオ島のトライバルタトゥーは、現代のタトゥーアートに大きな影響を与えています。
 
フィリピン
フィリピンのルソン島の高原地帯には、近代文明と距離を置いて今なお伝統的な生き方を貫いているカリンガ族がいます。
カリンガ族も、現在にいたるまでタトゥーの習慣を保っています。
カリンガ族のタトゥーは、あたかも全身タイツをまとったかのように、腕は手首まで、足はくるぶしまで、すっかり覆いつくす形で彫るのが特徴です。
絵柄は直線による図形が主体ですが、繊維で織りなしたかのような複雑で繊細な造形がなされ、本当に布の服を着ているかのような印象を与えます。
描かれるパターンが身体に対して左右対称のシンメトリーになっているのが特徴です。
ルソン島のほか、ミンダナオ島などでもさかんにトライバルタトゥーは行われています。
伝統的には、結婚を可能にするイニシエーション(通過儀礼)として首狩りを行う習俗があり、トライバルタトゥーはこれと深く関係していました。
 
インドネシア
東西に5110kmも広がり、大小1万3466個の島からなる大きな国です。その島々や山岳地帯にたくさんの部族が存在します。
中には石器時代とさほど変わらない生活を今でも送っている部族もあり、さらには極端に排外的で、
外部から来る者は偶然漂流してきた者まで含めて殺害してしまう部族もあります。未解明の部分もたくさんある地域と言えるでしょう。
スマトラ島の西に浮かぶシベル島のメンタワイ族のトライバルタトゥーの特徴を紹介します。
ジベル島も近代化から取り残された期間が長く、今でも沿岸部の町にしか水道、電気などのインフラは整備されていません。
身体はもちろん、顔や指先まで含む全身彫りという点で、ボルネオなどに見られるトライバルタトゥーとの共通性があります。
パターンは単純な点と線で構成され、素朴な印象を受けます。使う道具もシンプルで、もともとは木の根やトゲでした。今でも一本針で行います。
 
ベトナム、ラオス、ミャンマーなど
フィリピンで見られる布地のような模様で全身を覆うようなトライバルタトゥーは、中国の周辺エリアであるラオスやベトナム、海南島、台湾、沖縄などには
共通して見られます。
沖縄では、織物で一定のパターンを習得した女性はそれをタトゥーにしても良いというルールがありました。
地理的に見て、中国の影響でこうした特徴が獲得されていったものと考えられます。

 

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